ROAで見る“企業の実力”とは?デュポン分析による2つの視点
ROA(Return on Assets、総資産利益率)は、企業が持つすべての資産を使って、どれだけ効率よく利益を上げているかを示す指標です。ROEと異なり、財務レバレッジの影響を受けないため、経営そのものの実力を測るには最適な指標と言われます。
ROAの基本とデュポン分解
ROAは以下のように定義されます: \[ \text{ROA} = \frac{\text{純利益}}{\text{総資産}} \] これをデュポン分析で分解すると: \[ \text{ROA} = \frac{\text{純利益}}{\text{売上高}} \times \frac{\text{売上高}}{\text{総資産}} \]
構成要素の意味
- 利益率(純利益 ÷ 売上高):売上に対する収益性
- 総資産回転率(売上高 ÷ 総資産):資産をいかに効率よく使っているか
ROAは、企業が自己資本や負債に関係なく「持っている資産」をどれだけ活かしているかを見る指標です。
実例:同じA社で見ると?
ROEの記事でも登場した、A社について今度はROAを求めてみます。
売上高:100億円、純利益:5億円、総資産:50億円
- 利益率:5%
- 資産回転率:2.0
ROA = 5% × 2.0 = 10%
ROEとの違いと活用の視点
ROEはレバレッジによって高められる一方、ROAは「資産をどれだけ活かせているか」を示す純粋な経営効率指標です。 投資家がROEを重視する一方、銀行や内部評価ではROAが使われることも多いのです。
まとめると、
- 対象となる資本の範囲
- ROAは企業が保有するすべての資産(借入金などの負債を含む)を対象にする。
- ROEは株主が出資した自己資本のみを対象にする。
- つまり、 ROAは「企業全体の運用効率」、ROEは「株主資本の運用効率」を示す。
- 財務レバレッジの影響
- ROEは、財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)によってROAよりも高くなることがある。
- ROE = ROA × 財務レバレッジ
- つまり、 借入などで資産を拡張すれば、ROEは高くなるが、リスクも増す。
- 経営者と投資家の視点の違い
- ROAは経営者が「企業全体の効率性」を見るために使う。
- ROEは投資家が「株主資本の収益性」を見るために使う。
- つまり、ROAは事業運営の健全性、ROEは資本政策や株主還元の評価に直結。
ということができます。