【第3回】ケース研修と試験の変化と対策

【第3回】ケース研修と試験の変化と対策 itc

PGL4.0は、外部環境の激しい変化、特にデジタル社会の進展とIT技術の急速な進化に対応するため、PGL3.1から大幅に改訂されました。従来の「IT経営」から「デジタル経営」へと視点を広げ、より包括的な内容となっています。

主な変更点は第1回で説明していますのでそちらをご参照ください。ここでは、この変更がケース研修と試験にどう影響するか、について予想します。

⚠️注意⚠️ このページは推測に基づいているため、現実のケース研修や試験と異なる結果になることが予想されます。そのため、実際にPGL4.0版準拠のケース研修や試験を経験された方などからの情報を歓迎いたします。もしお知らせいただける方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームからお教えいただければ大変助かります。

ケース研修の変化予想

より複雑なビジネス変革シナリオへの対応

単純なITシステム導入案件ではなく、企業文化の変革、新規事業創出、社会価値の追求、複数部門にまたがるDX推進といった、より広範で経営層の関与が不可欠なケースが中心となると考えられます。

リーダーシップと組織変革の視点強化

経営者やデジタル経営推進者がどのようにビジョンを共有し、従業員のエンゲージメントを高め、失敗を許容する文化を醸成するか、といった「人」と「組織」に焦点を当てた課題解決が求められると思われます。

単にIT導入計画を立てるだけでなく、変革への「思い」をどのようにステークホルダーに語り、巻き込んでいくか、といったコミュニケーション能力やファシリテーションスキルが重視される可能性もあるでしょう。

「サイクル」と「仮説・検証型」の適用

ウォーターフォール型ではない「仮説・検証型」のアプローチを用いた、迅速な価値提供とフィードバックの繰り返しを前提とした、計画立案や軌道修正の能力が問われます。
ケースでは、計画通りに進まない状況での柔軟な意思決定とサイクルの回し方が焦点となるでしょう。

なお、3.1の時代にも形は違えどループがあり、軌道修正そのものについてはケースでも体験させていましたので、4.0でも手戻りの発生をシミュレーションする演習は発生するでしょう。

「共通基盤」の横断的活用

サイクルマネジメント(CB-1)により、複数のプロジェクトやプロセスを全体最適の視点で調整し、ボトルネックを解消する能力が試されると思われます。

コミュニケーション(CB-2)のプランニングや実行、モニタリング&コントロール(CB-3)によるデータに基づいた客観的な評価と是正措置、セキュリティ(CB-4)を考慮したリスク管理、そして組織学習(CB-5)を通じた知識共有と能力向上が、ケースシナリオの随所に組み込まれると予想されます。

役割間の連携と協働

デジタル経営推進者、開発リーダー、運用リーダー、デジタル経営支援者といった多様な役割を持つ登場人物が、どのように連携し、それぞれの専門性を活かして協働するかが、ケース解決の重要なポイントとなるでしょう。

試験の変化予想

新用語・概念の定義問題

「デジタル経営」「サイクルマネジメント」「提供価値検証プロセス」「組織学習」「BizDevOps」「仮説・検証型」など、PGL4.0で導入された新しい概念や用語の正確な定義を問う問題が出題される可能性が高いです。

💡参考💡 <注意:サンプル問題のネタバレがあります。以下同様です。>

ITコーディネータ協会では、PGL4.0に準拠した試験のサンプル問題をこちらで公開しています(2025年6月現在)。

●このうち、サンプル問題9は選択肢に「サイクルマネジメント」が含まれており、これはPGL4.0で新設された概念です。(この選択肢が正答であるかどうかは、また別の問題ですが。こちらも、以下同様です。)

「10の基本原則」とその適用

従来の「7つの基本原則」に加え、新たに加わった原則(特にリーダーシップ、人的資本経営、共創、データ重視)の具体的な内容と、それらがデジタル経営の各プロセスやアクティビティでどのように適用されるかを問う応用問題が増えるでしょう。
単に原則名を覚えるだけでなく、その「本質」を理解しているかどうかが問われると考えられます。

役割と責任の明確化に関する問題

経営者、デジタル経営推進者、開発リーダー、運用リーダー、デジタル経営支援者のそれぞれの具体的な責務、主担当・補佐担当プロセスについて、詳細な知識が問われると思われます。

💡参考💡

●サンプル問題1「デジタル経営推進者の役割」、サンプル問題6「IT導入実行計画書策定の役割」は、役割の明確化を問う典型例(3.1以前からも)です。
●サンプル問題13「組織学習を主導する者」は、経営者のリーダーシップを強調している問題です。

サイクル間の連携とフィードバックの理解

C1とC2の各プロセス(P1~P6)と共通基盤(CB-1~CB-5)の間で、どのような情報がインプット/アウトプットされ、どのようにフィードバックされるかといった、プロセス間の関係性を理解しているかが問われるでしょう。

💡参考💡

サンプル問題14「デジタル経営成熟度レベル目標設定」は、成熟度の理解を問う応用問題です。(成熟度自体は3.1でもありましたが、デジタル経営成熟度は4.0の概念です)

セキュリティとリスク管理の深掘り

セキュリティが独立した共通基盤(CB-4)となったことで、脅威・脆弱性の把握、影響分析・評価、セキュリティレベル・指標の策定、対策の実装と運用、継続的改善といった一連のセキュリティ管理プロセスに関する問題が増えるでしょう。

💡参考💡

サンプル問題12「セキュリティ計画の継続的改善」、サンプル問題24「可用性」はセキュリティに関する問題です。(こちらも、概念自体は3.1でもありました)

実践的な応用力

PGL4.0は実践における進め方(プロセス)まで示すことにも重きを置いているため, 単なる知識だけでなく、与えられた状況で最適な行動や判断を下せる応用力を問う問題が増加すると考えられます。

まとめ

これらの変更点を踏まえると、ITコーディネータの学習者は、単に知識を暗記するだけでなく、デジタル経営の全体像を理解し、各要素がどのように連携し、具体的な経営課題解決に繋がるかを、「リーダーシップ」「価値創造」「データ駆動」「サイクル思考」「協調性」といったPGL4.0の根幹をなすテーマに沿って深く掘り下げて学ぶ必要が生じる、と考えられます。

次回は、【第4回】基本原則1:リーダーシップの原則です。

いよいよ基本原則10傑集の攻略に移ります。

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